高齢出産って何歳から?リスクもあるけどメリットも。徹底解明。

出産

高齢出産って何歳から?リスクもあるけどメリットも。徹底解明。

高齢出産って何歳から?リスクもあるけどメリットも。徹底解明。

近年、日本では高齢出産が増加しています。 日本社会の晩婚化や女性の社会進出が進んだことで、年齢を重ねてからの出産を希望する人が増えてきたのです。 若い時期の出産に比べると高齢出産にはリスクがつきものですが、メリットもたくさんあります。 今回は高齢出産におけるリスクとメリットを紹介したいと思います。

高齢出産は何歳から?高齢出産の定義とは

0010_2.jpg 女性の社会進出が進み、ライフスタイルが多様化している現代において高齢出産は珍しいことではありません。 高度経済成長期には、女性は就職しても2〜3年ほど腰掛けで働き、寿退社をして家庭に入り子どもを産むというライフスタイルが主流でした。

現在ではキャリアを求める女性も多くいますし、共働きの家庭も少なくありません。 結婚を望まない人や、結婚をしていても趣味や自分の時間を楽しんでから出産したいという方も増えて来ています。

高齢出産の定義

高齢出産の定義は「35歳以上の女性が出産をすること」です。 日本産科婦人科学会やWHO(世界保健機関)が定義しています。

1991年頃までは高齢出産の定義は30歳以上でしたが、30歳以上での初産が増えているため、定義が変化し35歳以上となりました。 実は「高齢出産」という言葉は医学的な用語ではありません。

医学的には30代半ばを迎えると、女性は妊娠に関するさまざまなリスクが高くなるといわれています。 医学用語では35歳以上で初めて出産する人を「高年初産婦」と呼びます。

加齢とともに自然に妊娠する力は低下する傾向にあり、30歳ごろからだんだん自然妊娠する確率は減っていきます。 また、35歳以降は流産する確率が上昇すると言われています。

35歳以上の女性は25〜34歳以下の人たちに比べて、出産や胎児に関するリスクが高くなる傾向にあるため、注意が必要なのです。 2人目以降の妊娠であっても、35歳以上での出産であればリスクは高いものという前提で注視しなければなりません。 これらの理由で、35歳以上での出産を「高齢出産」と呼び、より注意が必要だと定めているのです。

日本の出産の実情は?増え続ける高齢出産

日本では晩婚化、晩産化が進んでいます。 厚生労働省の人口動態統計(参考サイト)によれば、ここ25年ほどで、35歳以上で出産する人の割合は20ポイントほど増えています。

・1995年(平成7年)に生まれた赤ちゃん1,187,064人のうち、35歳以上の割合は約9.5%、40歳以上が約1.1%。 ・2020年(令和2年)に生まれた赤ちゃん840,832人のうち、35歳以上の母の割合は約29.2%、40歳以上は約5.9%。

1980年代から、20代での出産の割合が急激に減少し、30代以上の出産が増加してきました。 2005年頃からは晩産化がさらに加速し、35〜39歳の割合が増えてきています。 40代での妊娠・出産もさほど珍しいことではなくなってきました。

2020年(令和2年)には、第1子に限定した場合、出産時の母親の年齢は35歳以上が約20.9%、40歳以上が約4.5%です。 つまり高齢出産は5人に1人程度ということですね。 45歳以上で出産した人も1,676人いました。

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出を促進しました。 結婚や妊娠を期に退職する女性が多かった時代には20代で出産する人が多くいましたが、現在は働き続ける女性が増えました。 ライフプランが変化し、結婚や妊娠・出産は年齢を重ねてからと考える人も多くなったのです。 「必死に就職活動をして採用を勝ちとったのに、すぐに辞めてしまってはもったいない」 「もう少し仕事を頑張ってから結婚した子どもを産みたい」 「仕事もしながら自分の時間を楽しもうと思ったら、結婚や子どもなんてすぐには考えられない!」 このように考える人が増えたのです。

高齢出産のリスクとは?

0010_3.jpg 高齢出産にはいくつかのリスクがあります。 母体や胎児の健康上のリスクにはどんなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。 健康面だけではなく、経済的なリスクの可能性もご紹介します。

母体の健康上のリスク

高齢出産に限らず、お腹の中で新しい命を育むことは体に相当な負担がかかります。 高齢出産の場合は、若いときの妊娠出産よりもその負担が増加し、さまざまなトラブルが起こりやすくなります。

妊娠高血圧症候群にかかりやすい 妊娠高血圧症候群は妊娠中に高血圧を発症するものです。 重症になると痙攣を起こしたり胎盤が剥がれることもあり、とくに注意が必要です。

妊娠糖尿病になりやすい 妊娠糖尿病は妊娠をきっかけに糖尿病を発症するもので、低血糖や腎症、羊水過多などの合併症を起こしやすくなります。 赤ちゃんが巨大になり難産になる可能性も引き起こしてしまいます。

子宮筋腫などの婦人科系トラブルが増加 30代後半になると子宮筋腫や卵巣腫瘍などの婦人科系の病気が増加してきます。 子宮筋腫自体は良性腫瘍ですが、できるや位置や大きさによっては胎児発育不全や流産・早産のリスクが高まります。

流産、早産の可能性が高まる こういった疾患がなくても、妊娠全体の約15%の頻度で流産は起こるものです。 しかし、高齢出産になると流産する確率はぐんと上がってしまうんですよ。 妊娠初期の流産の多くは、赤ちゃんの染色体異常と言われています。

卵子は生まれたときから卵巣に保管されていて、加齢とともに老化していくことをご存知でしたか? 1日に数千万個作られる男性の精子とは異なり、新たに作られることはありません。

老化した状態の卵子は染色体異常を起こしやすく、妊娠自体が難しかったり、流産しやすいというリスクがあるのです。 早産とは、妊娠22週から妊娠36週6日までの出産のことをいいます。

心肺機能などが発育途中の状態で生まれてしまうため、生存が難しかったり、障害があったり、医療的ケアが必要になったりすることがあります。

難産や帝王切開の可能性が高くなる 高齢出産では、産道や子宮口の柔軟性が衰えて硬くなることで、難産になりやすいと言われています。 分娩時になかなか子宮口が開かないと、帝王切開になってしまう場合があります。胎盤が子宮口を塞ぐ位置にできてしまう前置胎盤も高齢出産では起きやすいというデータがあります。

赤ちゃんの通り道を塞いでしまうため、前置胎盤の場合は帝王切開が選択される事が多いようです。

産後の回復が遅くなる、育児での体力的負担が大きい 高齢出産の場合、若い頃に比べて体力が衰えています。 会陰切開の傷や帝王切開の傷がなかなか治らなかったり、出産で失った体力を取り戻すのに時間がかかることがあります。 また、夜間に何度も起きるのが辛くなる、成長して動き回る我が子と遊ぶのに体力が追いつかない、など若い頃よりも体力的に負担を感じる方も多いのですよ。

胎児の健康上のリスク

高齢出産では母体に異常やトラブルが起こると、流産や早産を招いたり、発育不全をおこすことがあります。 一方で、母体に異常やトラブルがなくても、高齢出産の場合、胎児自身が健康上のリスクを負う確率が高くなります。 高齢出産ではダウン症候群などの先天性の異常が起こる場合があります。

人間の細胞の中には46本の染色体がありますが、染色体の数や構造に異常が起こる場合があります。 これを染色体異常といい、21番染色体が1本多い状態(トリソミーと呼ばれる)で産まれるのがダウン症候群です。 ダウン症候群児は見た目や発達のスピードに特徴があります。

生まれつき心臓や消化器のはたらきが悪かったり、病気にかかりやすいといった健康上のリスクがあります。 ダウン症児は心臓疾患の合併症を抱えて生まれる場合が多く、幼い頃に亡くなってしまう例もあります。

経済的リスク

出産、育児にはお金がかかります。 仮に40歳で出産した場合、育児費用や教育資金を自分の老後の資金を貯めながら暮らすのはかなりハードになってきます。そこに自身の通院費用や、親の介護などが加わってくると金銭的負担は相当なものになります。

また、女性は年齢が上がるにつれて妊娠しにくくなるのですがそもそもそのことを知らない人も多くいるのではないでしょうか。 高齢出産する芸能人などが増えてきて、「何歳でも妊娠できる」というイメージを持っている人も多い印象です。 しかし年齢が上がるにつれ授かりにくくなるのが現実です。

妊娠を先延ばしにした結果、不妊治療をする人もいます。 2022(令和4)年度から不妊治療が健康保険適応になりました。

しかし年齢・回数には要件があり、何歳でも何回でも大丈夫というわけではありません。 さらに、高齢出産で産んだ子どもが医療的ケアを必要としたり、障害を持っている場合には、さらなる経済的な負担がのしかかることも予想されます

高齢出産のリスクに備えるには?

0010_4.jpg ここまで、高齢出産に関するさまざまなリスクをお伝えしました。 しかしリスクがあるからと言って、高齢出産を必要以上に怖がる必要はありません。 健康上のリスクに関しては、生活習慣を見直し基礎的な体力をつけておいたり、しっかり妊婦健診を受ける、出生前診断を受けることでカバーできます。 産後の生活が心配な場合は、自治体の育児支援サービスや民間のシッターサービスなどの利用を考えましょう。 もちろんご主人やパートナーにも協力してもらい、安全に安心して子育てできる環境を整えましょう。 経済的な負担が心配な場合には、医療保険や出産保険が使える場合もありますよ。

デメリットだけじゃない!高齢出産の3つのメリット

0010_5.jpg 高齢出産はリスクが高いことをお伝えしてきましたが、逆に高齢出産ならではのメリットもあります。 高齢出産だからといって、すべての妊婦が難産になるわけではありませんし、トラブルなく出産している人も多いです。 20代での出産でも難産やトラブルは起こることはあります。 リスクが高いことを知った上で、しっかり管理していきましょう。 高齢出産の3つのメリットをご紹介します!

経済的なゆとりがある

高齢出産をする夫婦は若い夫婦に比べて経済的にゆとりがある場合が多いでしょう。勤続年数や年齢に応じて賃金が上昇する年功序列型の企業が多い日本では、年齢を重ねているほど、収入や貯蓄も多くなっています。 少ないお給料でカツカツな妊娠・出産ということにはなりにくいでしょう。 体力面の負担を補うために、シッターサービスなどを利用する余裕も持てるのではないでしょうか。 経済的なゆとりがあることで、体力的・精神的にもゆとりをもって子育てできるのはかなり大きなメリットと言えるでしょう。

精神的なゆとりがある

人生経験も豊かで、精神的にも成熟しているということは、高齢出産ではメリットになります。 長い間、仕事や趣味を続けるなど、さまざまな経験を積むことができた人は精神面での余裕があります。

ある程度キャリアを積めたという満足感や、好きなことに没頭できる時間をもったことは、育児をする上でもプラスに働くこと間違いなしです。 育児は予想外の出来事の連続で、思い通りにいかないことばかり。 しかし人生経験が豊富な高齢出産ママなら、おおらかに過ごせるのではないでしょうか。

すでに出産経験を持った友人などを見て、ある程度育児についての知識がある場合も多いでしょう。 人脈の面でも、気軽に相談できる相手をもちやすいのではないでしょうか。

社会復帰しやすい

キャリアを積んでから妊娠・出産をすることの多い高齢出産では、復職もしやすくなるでしょう。 若い頃にあまり社会経験がないまま妊娠出産をし、長く専業主婦だったという人が社会に出ようとするのは難しいことです。

対して、キャリア積んで来た人は元の職場に復帰するときも、新たに仕事を見つけるときも比較的スムーズになるでしょう。 キャリアが有り、自分の社会的な能力を知った上で妊娠出産できるのは、高齢出産ならではの強みではないでしょうか。その先の人生設計も見据えながら子育てできるのは素晴らしいメリットだといえます。

まとめ

高年出産は母体にもおなかの赤ちゃんにもリスクがあります。 もしかしたら、高齢出産にネガティブなイメージをもっている人もいるかも知れません。

しかし、年齢を重ねたからこそできたさまざまな体験により、たくさんのメリットもあります。 経済的な余裕があることで、産後に自分の体の回復のためにお金を使うことで体力面のデメリットもカバーできます。 人生経験を重ねているので、おおらかに子育てできるという精神面でのメリットもあります。

赤ちゃんを産み育てることは尊いことです。 この記事が妊娠・出産を希望する人が年齢で諦めることなく、ライフプランを描く参考になれば幸いです。

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