出産前に知りたい、分娩の種類について

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出産前に知りたい、分娩の種類について

出産にはさまざまな分娩の種類があります。大きく分けると赤ちゃんが産道を通って出てくる「経腟分娩」と腹部を切開し赤ちゃんを取り出す「帝王切開」の2つです。

最近では麻酔を使用し陣痛の痛みを軽減させる「無痛分娩」を選択する人も徐々に増えています。

出産は100人いれば100通りと言われるほどです。 母体とおなかの赤ちゃんを守るために当初予定していた分娩方法から違う方法に変更になる場合もあります。 そのとき焦らないためにも予定している分娩の種類以外についても確認しておくといいですね。分娩の種類を知って自分に合った出産方法を見つけてください。

自然分娩と計画無痛分娩を経験した筆者が経験談も交えながら解説していきます。

経腟分娩

01.jpg 経腟分娩とは、赤ちゃんが産道を通って膣から出てくる出産のことを言います。 日本では約8割の妊婦さんが経腟分娩で出産しており、帝王切開と比較すると「出産後の母体の回復が早い」「入院期間が短い」「立ち合い出産ができる」といったメリットがあります。

長時間の激しい陣痛に耐えられる体力が必要になるので、妊娠中からウォーキングやマタニティヨガなどの適度な運動で体力づくりができるといいですね。 経腟分娩のなかでも種類分けがされているので紹介していきます。

自然分娩

02.jpg 自然分娩は、医学的な補助を受けずに始まりから出産が終わるまで自然に任せた出産の種類です。自然に陣痛が始まり、陣痛が強まってお産が進んでいきます。 出産にかかる時間は人それぞれですが平均で初産婦さんは約14時間、経産婦さんは約8時間と言われています。

自然分娩のなかで最近主流になっているソフロロジー法についても紹介していきます。

ソフロロジー法

自然分娩のなかでも多くの妊婦さんが希望する方法です。 フランスから日本へ導入されました。ソフロロジー法はお母さんがリラックスした状態で出産に臨みます。 リラックスするためには、イメージトレーニング、呼吸法、エクササイズなどのトレーニングが必要です。 イメージトレーニングは産院や役所の母親学級に参加することをおすすめします。 筆者も母親学級に参加し、助産師さんから実際の分娩の流れを教えてもらうことでイメトレをしていました。

呼吸法はいわゆる「いきみ逃し」をする方法です。息をゆっくり吐きだすことに集中し陣痛の痛みを和らげます。 妊娠中にマタニティヨガなどのエクササイズをするときに呼吸法も意識して練習できるといいですね。

誘発分娩

03.jpg 誘発分娩は、予定日を過ぎたのに陣痛が始まらない場合や、陣痛は始まっているのに微弱な痛みが続いたり、途中で止まってしまったりする場合に行われる出産の種類です。 母体や赤ちゃんの負担が大きくなる時に行われます。

陣痛を誘発する方法は2種類あります。 1つは子宮口を開く方法です。 子宮口が固くて赤ちゃんが出てこられないときに「ラミナリア」「バルーン」と呼ばれる器具を挿入して人工的に子宮口を開きます。

「ラミナリア」は約5㎝の棒状で、天然の昆布が原料になっています。子宮頚管に挿入すると身体の中の水分を吸収して子宮口が開きます。

「バルーン」はまさに名前の通りで、子宮口に風船のようなゴムの袋を挿入します。その袋の中に蒸留水や生理食塩水を注入することでバルーンのように膨らみ子宮口が開きます。

筆者は計画無痛分娩のときに、このバルーンの処置をしました。バルーンが膨らんでいるときは生理痛のような痛みが続きバルーンが膨らむと膣から自然に出てきます。

陣痛を誘発するもう1つの方法は陣痛を人工的に起こす方法です。 陣痛促進剤を投与しホルモンの量を増やすことで陣痛を誘発させます。 促進剤の投与方法は錠剤や点滴などの方法があります。

陣痛促進剤を使用すると陣痛の進みが早くなるので自然分娩より痛かった、という体験談もよく聞きますね。

吸引分娩・鉗子分娩

05.jpg 吸引・鉗子分娩は子宮口が全開になったときに、早く赤ちゃんを外に出してあげる必要があるときに行われる出産の種類です。 例えば、母体が疲労や微弱陣痛でお産が進まなくなってしまった場合や赤ちゃんの心音が急に低下してしまった場合です。

方法は2種類あり、吸引分娩と鉗子分娩があります。 吸引分娩はお茶碗のような形のカップを赤ちゃんの頭につけて吸引します。カップの素材はゴムやプラスチックでできていて、カップを別に機械に取り付けて吸引圧をかけることで赤ちゃんの頭と密着させて引っ張ります。

鉗子分娩は大きなスプーンが2枚合わさっているような形の金属製の器具を使います。鉗子を膣内に挿入し赤ちゃんの頭をしっかりはさみ最後は産婦人科医が人力で赤ちゃんを引っ張り出します。

吸引・鉗子分娩することで赤ちゃんの頭皮に傷がついたり、頭の形は細長くなったりすることがあります。 徐々に目立たなく治り、脳への影響はほとんどないので心配する必要はありません。

計画分娩

06.jpg 計画分娩は、出産する日をあらかじめ計画的に決めておく出産の種類です。 誕生日にこだわりがある、上のお子さんがいる場合は預け先のスケジュール調整が必要な場合に行われる方法です。

旦那さんが仕事で忙しいけど絶対に立ち会ってほしい、などの希望がある場合も適しています。 また、おかあさんが妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群で医学的な理由で計画分娩が必要な場合もあります。

最初から赤ちゃんの心拍を計測できるので安心してお産に望めます。人手の多い時間帯にお産が出来るというメリットもあります。 経腟分娩ではなくても無痛分娩と帝王切開も基本的に計画分娩で行われることが多いです。

無痛分娩

07.jpg 無痛分娩は、分娩中に麻酔を使用して陣痛の痛みを軽減する出産の種類です。 無痛といっても痛みや感覚が全くなくなるわけではありません。 陣痛のときのおなかの張りや赤ちゃんが下に降りてくる感覚はあります。 また無痛分娩はどこの病院でも対応しているわけではありません。 無痛分娩を希望している場合は無痛分娩対応している病院を選びましょう。病院によっては24時間対応してくれるところと、麻酔科医のいる日中だけなど制限がある場合もあるので慎重に選ぶ必要があります。

無痛分娩では「硬膜外麻酔」という種類の麻酔が使われることが多いです。 背中に注射をしてカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、腰椎の下の脊椎を囲む硬膜の外側に麻酔を注入します。

無痛分娩の最大のメリットは陣痛の痛みを軽減できることです。 自然分娩だと長い時間陣痛に耐えるのでいざ子宮口が全開になっていきむときには体力がなくてヘロヘロということも少なくはありません。 また、無駄な体力を使わずに済むので出産後の体の回復も早いです。

しかしメリットがあればもちろんデメリットもあります。 無痛分娩を考える際はデメリットについても産院の医師から話をしっかり聞きましょう。 デメリットで多く発生する可能性があるのは、麻酔の影響で陣痛が弱まることです。 おかあさんの感覚も少し鈍くなるのでうまくいきめず吸引・鉗子分娩になることがあります。 費用が高くなってしまうのもデメリットの1つです。 デメリットを聞いたうえで選択することで重要です。

筆者の経験では、1人目が自然分娩で2人目が計画無痛分娩でした。 上の子を主人にみてもらうために会社の休みが必要だったこと、退院後の上の子のお世話も考えて体力の回復を早くしたかったこと、1人目のとき陣痛が痛くて怖かったことを理由に無痛分娩に決めました。 陣痛が始まってから子宮口前回直前までは本当に痛みはなくお腹の張る感覚だけです。子宮口が全開になるとさすがに痛みもありましたが感覚的には自然分娩の半分以下です。想像していたより最後はきちんと痛みがありましたが、痛みが多少あったほうがうまくいきめたという感想です。 痛みに耐えて産んでこそ母親だ、痛みに耐えないと愛情がわかない、といった昔の考え方もありますがそんなことはありません。 自然分娩で産んだ上の子も無痛分娩で産んだ下の子も同じくらい愛情があるので安心してください。

帝王切開

08.jpg 帝王切開は、腹部を切開し子宮を開いて直接赤ちゃんを取り出す出産の種類です。 医学的な理由がなければ日本では帝王切開を実施することはありません。 近年、帝王切開の件数は増加傾向にあります。 理由は出産の高齢化が進み、合併症などによるリスクが高まっているからです。 帝王切開には「出産後の回復が遅い」「入院期間が長い」などのデメリットがありますが、母体とおなかの赤ちゃんのリスクを軽減させるために帝王切開が選択されるのでありデメリットと気負うことはありません。

予定帝王切開

予定帝王切開は妊婦検診の時点で自然分娩は難しいと判断し、帝王切開することを決めます。 予定帝王切開する判断理由は、逆子である、多胎(双子や三つ子)である、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症がある、1人目が帝王切開だった、母体に手術歴や持病がる、など理由はさまざまです。

緊急帝王切開

緊急帝王切開は母体や胎児の緊急を要する状況になったときです。 もっとも多い理由は妊娠中や分娩の進行中に赤ちゃんの元気がなくなってしまうときです。経腟分娩中に赤ちゃんが体のなかでへその緒などに引っかかってしまいうまく降りられなくなってしまう場合もあります。

緊急帝王切開は急な手術になるので、手術前の準備や術中の管理が緊急性を伴い術後の合併症のリスクも高くなります。

しかし、緊急帝王切開が必要な状況では早急に手術を行わなければ母体や胎児の生命にかかわる重大な危険があるため、医師による迅速な判断が必要です。

まとめ

さまざまな出産の種類をご紹介しました。どの方法を選択しても出産はまさに命がけです。 かけがえのない我が子に会うためですから後悔のない出産にしたいですね。

一生のうち数回しかない体験ですから、おかあさんも家族もみんなが納得のできる方法を選びましょう。

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