いつからどうやって始める?産褥体操について

出産

いつからどうやって始める?産褥体操について

出産後には休息を取ることも大切ですが、適度に身体を動かすことも大切です。 「産褥体操」は産褥期の間に行うことで、妊娠や出産によって伸びた筋肉やゆるんだ関節を元の妊娠前の状態へと戻すのを助ける効果、全身の血液循環を良くすることで、むくみの改善や子宮の回復を助ける効果があるといわれていて、出産後の身体の回復を促すのにぴったりの運動です。  体操や運動というと、身体に負荷をかけて行うものという印象があるかと思います。しかし、産褥体操は身体に負荷がかかりすぎると返って逆効果になってしまうのです。今回は出産後のいつからやればいいのか、時期に応じたおすすめの産褥体操を紹介していきます。  産褥体操はいつから、どのように始めるのが効果的かということをしっかりと理解した上で行うようにしましょう。

出産後すぐから退院までの間

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産褥体操はいつから始めるのか、というと出産後すぐから始めることが可能です。ただ、出産直後はホルモンバランスの大きな変化や出産後の筋肉や関節の疲労が大きく、身体は疲労状態にあります。この時期に過度に筋肉や関節に負担をかけることは避けた方がよいでしょう。特に出産によって骨盤底筋と腹筋にはかなりの負荷がかかっています。出産直後から退院までの間は、骨盤底筋と腹筋に過度な負担がかからないようにベッドの上で寝ながらできる産褥体操がおすすめです。

1日目におすすめの産褥体操

1)胸式呼吸 あおむけに寝て、胸に手を当てて胸の広がりを感じながら息をゆっくりと吸ったり吐いたりします。 妊娠中から出産まではお腹が大きくなり、肺の圧迫も受けるため、無意識に呼吸が浅くなっている方が多いです。意識的に深呼吸をすることで肺の膨らみを感じましょう。また、深呼吸には身体と心の疲れを取る効果もあります。お気に入りのアロマがあると、よりリラックス効果やリフレッシュ効果を得られます。

2)腹式呼吸 あおむけに寝て、お腹に手を当てます。口から息を吐きお腹をへこませ、鼻から息を吸いお腹を膨らまします。ゆっくりと繰り返します。 腹式呼吸をすることで妊娠、出産後の弱った腹筋を負荷をかけることなく刺激できます。ゆっくりと行うことがポイントです。この腹式呼吸はいつからやるのが効果的かというと、まず出産後直後に行うといいです。緊張状態にある身体も鎮めることができますね。

3)足首体操 あおむけに寝て、左右の足首に力を入れ、交互に曲げたり伸ばしたりします。左右の足の指だけ曲げたり伸ばしたりします。 左右交互に、足首の関節をくるくる回転させます。 出産直後は身体を動かすのが億劫になり寝がちになります。特に帝王切開後の方は傷の痛みもあり、傷への不安からいつから動いていいんだろうと思う方もいると思います。しかしあまりにも身体を動かさないままでいると、深部静脈血栓ができるリスクが高まったり、筋肉は使わないとすぐに衰えていくので立つことも辛い状態になりかねません。いつからやればいいのかと深いことは考えず、まずは足首だけでも意識的に動かすだけで、これらのリスクは軽減できるのです。

2日目におすすめの産褥体操

1)頭の上げ下げ運動 あおむけの状態で膝は伸ばしたまま行います。息を吸いながら頭を起こして一呼吸止め、息を吐きながらゆっくり頭をさげていきます。 出産後は首と肩周りが凝り固まりやすくなります。出産中にふんばったり、赤ちゃんをだっこしたり、授乳したりと何かと首や肩が緊張するタイミングが多いことが理由に挙げられます。呼吸をしながらゆっくりと動かすことで首と肩周りの筋肉の伸びを感じましょう。

2)キーゲル体操(膣と肛門を引き締める運動) あおむけか座った状態で行います。排尿や排便を途中で止めるように膣と肛門にキュッと力を入れます。キュッと力を入れた状態で10秒ほどゆっくり息を吐きながら行いましょう。 このキーゲル体操は、骨盤底筋を引き締めるのに大変効果的です。出産後は特に骨盤底筋が緩んだ状態になりやすいです。出産後の骨盤底筋の緩みは尿漏れの原因にもなります。キーゲル体操を定期的に行うことで骨盤底筋を刺激していきましょう。 ただ、出産が経膣分娩でおすその傷が大きい方は傷の部位に負荷がかかる恐れもあります。傷が大きい人はいつから始めればいいのかというと、出産後7日目をこえた頃には大体の人が大丈夫といえますが、医師、助産師に確認した上で行うとよいでしょう。

3)肩甲骨を動かす運動(母乳体操) ①右肩に右手の指先、左肩に左手の指先を置いた状態で息を吸いながら腕を肩の高さまで上げます。息を吐きながら脇をしめるように腕を下ろし、10回繰り返します。

②指先は肩に置いたまま、腕を肩の高さまで上げ息を吐きながら胸の前で両肘を合わせます。腕の高さはそのまま、息を吸いながら胸を広げ、肘を左右に開きます。10回繰り返します。

③指先は方に置いたまま、腕を肩の高さまで上げ息を吸いながら内側から上に肘を上げ、息を吐きながら肘を下ろします。5回繰り返します。反対回しも行っていきます。

母乳はいつから出るのかというと、胎盤が出た後から母乳を分泌するホルモンが出るようになり、母乳が出始めます。しかし黙っていても出てくるわけではなく、乳頭を刺激したり、母乳分泌を促すためのケアも必要です。肩甲骨を大きく動かすことで背中周りの血液循環を促し、母乳の分泌を促進する効果があります。また、出産後の慣れない授乳や赤ちゃんの抱っこによって緊張状態になりやすい首から肩にかけてをしっかりとほぐすことで身体全体の緊張もほぐしていきましょう。

3日目から4日目以降におすすめの産褥体操

産褥体操に慣れてきた方は、いつから産褥体操の強度を上げてもいいのか気になると思います。ご自身がもう少し動かしたいなと思った時には強度を上げても大丈夫です。しかし、呼吸がしづらいと感じたら身体に無理がかかっているサインでもあります。産褥体操にはいつからこれをやる!というような決まりはありません。特に出産後の身体と心はデリケートなのでご自身の体調と相談し、無理のない範囲で行うようにしましょう。

1)足の曲げ伸ばし運動 あおむけになり片足の膝を立てます。膝の高さを変えずに息を吐きながら膝を伸ばします。片足5〜10回ずつ、両足とも行います。 足の付け根にある筋肉を刺激することができます。足の付け根にある筋肉は骨盤を支える役割もあります。妊娠、出産後の女性は骨盤周りの筋肉が緩んだ状態になりやすいので意識的に刺激していきましょう。

2)片足を下ろした足の交差運動 あおむけになり両足を伸ばします。息を吸いながら右足を上げ、膝は伸ばしたまま息を吐きながら左足の上を交差させるように右足を動かします。5〜10回行い、左足も同様に行います。 足の付け根にある筋肉、太ももの内側の筋肉を刺激できる運動です。出産後に緩みやすい股関節の近くにある筋肉を刺激できるため、骨盤や股関節がグラグラするのを改善できる運動です。下腹部にも少し負荷がかかるため無理のない範囲で行いましょう。

3)肩と腕を動かす運動 あおむけになった状態で、手のひらを上にして息を吸いながら両手を左右に大きく開きます。開いた手を肘を伸ばしたまま息を吐きながら真上に上げていき、力を入れて手のひらを合わせます。 上半身は下半身と比べると日常生活や育児の中で自然と筋肉が使われやすいですが、逆に筋肉が縮こまった緊張状態になりやすいです。そのため筋肉を意識して伸ばすような産褥体操をすることで疲れを緩和できます。

退院から1ヶ月くらいまでの間

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出産を終え、退院後は赤ちゃんを迎えたばかりで慣れない育児が始まり、疲労が強まる時期です。この時期は身体と心に負荷をかけることは控えたい時期です。ご自身の身体と心の声をしっかりと聞いた上で体調に合わせて産褥体操を進めるようにしましょう。 入院中の産褥体操を継続しつつ、少しずつ運動強度をあげていきます。最初は寝たままの姿勢でできる運動から始め、座った姿勢、立った姿勢での運動やストレッチを取り入れていきましょう。

7日目以降におすすめの産褥体操

1)足上げ運動 あおむけになり、両膝を立てます。息を吐きながら片膝を伸ばし、身体と直角になるまで垂直方向に持ち上げます。 足を上げる運動は骨盤を支える筋肉を鍛える他、負荷をかけすぎずに下腹部の筋肉を刺激することができます。出産後少しずつ産褥体操を続けていき、今までの産褥体操に身体が慣れてきたら少しずつ強度を上げた足上げ運動を行っていきましょう。

2)腰上げ運動 あおむけになり両膝を立てます。両手の手のひらは床につけておきます。息を吸いながらゆっくりと腰を持ち上げ、息を吐きながらゆっくりと腰を下ろします。 この産褥体操を始めのうちは手に体重をかけて支えても大丈夫です。慣れてきたら手にかかる体重を減らしていき、腰を上げた状態のキープ時間を作るとより効果的です。 太ももの裏の大きい筋肉やおしりの筋肉にアプローチできる産褥体操です。

2週目以降におすすめの産褥体操

出産後2週目以降は赤ちゃんが寝ない時期にも突入したりと日々の疲れも強まる時期でもあります。無理のない範囲で心地よいと感じる産褥体操を行いながら、できるときに産褥体操の強度を上げていきましょう。 1)足上げ運動 あおむけになり、両膝を伸ばします。両手は身体の横にまっすぐと伸ばした状態で床から手を離します。膝を伸ばしたまま、右足を身体と直角になるまで垂直方向に持ち上げます。そのまま左足も膝を伸ばしたまま上げ、右足に添えます。片足ずつ膝を伸ばしたままゆっくりと床に下ろします。 慣れてきたら両足を同時に膝を伸ばしたまま下ろすようにすると腹筋も刺激できます。

2)腰回しの運動 肩幅程度に足を開いて立ちます。両手を腰に当ててゆっくりと大きく腰を回します。左回し、右回し両方行います。 骨盤周りの筋肉が少し整った上で行いたい産褥体操です。骨盤がグラグラする感覚が残ったままの状態で行うと関節や筋肉を痛める可能性があるので注意しましょう。

3週目以降におすすめの産褥体操

1)半身をかがめる運動 まっすぐに立ちます。手のひらが足首につくまで上半身を前に倒していき、頭を膝につけるようにします。 かがむ運動は特に身体全体の後ろ側を伸ばすことができます。ゆっくりと無理のない範囲で行いましょう。

2)おしりを上げる運動 うつぶせに寝て、両手を前で組み軽く両足を開きます。息を吸いながら、両膝をひきよせあげるようにして、 思い切り腰を高くあげます。

5週目から8週目くらいの間

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出産後の身体はいつから回復した!となるのか気になる方も多いと思います。1ヶ月健診を終えたあとの産後5週から8週目になると、出産後の女性の身体は少しずつ妊娠前の状態に近づいてきます。会陰の傷はほぼ回復しますし、帝王切開の傷もしっかりとくっつき安定する時期です。しかし、妊娠や出産によってゆるんだ筋肉や関節はすぐには元通りにはなりません。産褥体操の強度を上げて、少しずつ筋力を取り戻すことで筋肉をつけて関節を正しい位置へと導くようにしましょう。

1)腹筋の運動 あおむけになり、手を組んで胸元に乗せます。膝を立て、頭を軽く持ち上げてキープします。 慣れてきたらキープ時間を伸ばしていきます。呼吸が止まらないように注意して行いましょう。

2)背筋の運動 うつぶせに寝て両手は身体にそわせて手のひらを床に向けます。頭と両足を持ち上げて、一呼吸おいてゆっくりと下ろします。 腰痛を改善するには腹筋と背筋のバランスが大切だと言われています。腹筋だけに目を向けがちですが、背筋も刺激していきましょう。

3)全身の曲げ伸ばし運動 シンクなどつかまれるところに手をかけ、つかまります。足を腰幅ぐらいに開き、かかとをつけ たまま深くしゃがみ、息を吐き、腰をリラッ クスさせます。肩の力も抜いてぶら下がります。足の裏を床に押しつけて立ち上がり、かかとを床につけたままおなかをシンク等につけ、全身を伸ばします。アキレス腱やふくらはぎも伸ばしていきます。

まとめ

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今回はいつからどんな産褥体操を始めるとよいのか、具体的な方法について紹介しました。産褥体操は出産後の身体の回復を助ける効果がありますが、身体に無理なく行うことが大切です。産褥体操にはいつからこれをやる!という決まりはありませんので、呼吸を意識してゆったりとした気持ちで心地よいと感じる範囲で行うようにしましょう。 女性はもともとホルモンの影響で骨盤や関節が緩みやすい傾向にあります。周りの筋肉を鍛えることで骨盤や関節を正しい位置へと支えることができ、腰痛や関節のぐらつきを軽減できます。いつから、どのように、と考えすぎずにご自身の身体に意識を向けて身体を動かしていきましょう。

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