産褥期とは?産後の産褥体操の効果や目的、注意点など

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産褥期とは?産後の産褥体操の効果や目的、注意点など

10ヶ月の妊娠期間と出産を終え、体が妊娠前の状態に戻ろうと心身ともに様々な変化が起きるのが産褥期です。産褥期は出産後6〜8週間の期間をいいます。今回は産褥期の間に行うことで心身ともに良い効果をもたらすといわれている「産褥体操」について紹介していきます。

産褥期における体の変化

02.jpg 女性は妊娠後から出産後にかけて体に様々な変化が起きます。それはホルモンのバランスが大きく変化することが原因の一つに挙げられます。妊娠中はお腹の中の赤ちゃんの成長に合わせて少しずつホルモンの量が変化し、出産直前から産後、産褥期にかけては通常ではありえないほどのホルモンの変化をきたします。また、出産を終えた女性の体はお腹の中にいた赤ちゃんが外に出ることによって、体には色々な負荷もかかるのです。そのため、産褥期には普段よりも体を気にかけ適切な対処をしていくことが産後の回復にもつながります。

まずは産後にはどのような体の変化が起こるのかについて見ていきましょう。

骨盤がグラグラしたり腰が痛くなる

赤ちゃんが生まれるには骨盤を通ってくる必要があります。そのため、妊娠中の女性は出産が近づくと自然に骨盤を緩ませるホルモンがでるようになるのです。これは経膣分娩の方も帝王切開の方も同じようにホルモンは出ます。ただ、帝王切開の方は実際に赤ちゃんが骨盤を押し広げて通過し、出てくるわけではないため、経膣分娩で出産された方の方が骨盤が緩んでグラグラする、という感覚を味わいやすいといわれています。

また、妊娠期間の10ヶ月の間お腹に赤ちゃんを抱えていた女性は、重たくなるお腹によって痛みが出ないように体をがばうため、妊娠前とは重心のバランスが変化する方が多くいます。そのため、産後にお腹が軽くなった後にすぐには重心の変化に対応できず、産褥期には特に腰を痛めてしまう方もいます。

尿漏れしやすくなる

尿漏れには骨盤底筋という筋肉が関係しています。骨盤底筋とは、恥骨・尾骨・坐骨の間の骨盤の底に位置する筋肉を合わせて呼びます。骨盤底筋は骨盤の中にある膀胱や子宮、直腸などの臓器を正しい位置に保ったり、尿道を閉めて尿漏れを防ぐ役割があります。

妊娠中から重たくなった子宮によって骨盤底筋には負荷がかかります。また、出産のときには、この骨盤底筋が引き伸ばされてさらに負荷がかかります。お産の経過が長かった人は特に負担が大きいので要注意です。

骨盤底筋が負荷がかかって緩みやすくなってしまうことで尿漏れが起こりやすくなるのです。特にお産直後の産褥期には尿漏れに悩まされる方も多いのです。

むくみやすくなる

妊娠中の女性の体は、お腹の赤ちゃんに血液が送りやすくなるよう、また出産に耐えられるように体の中の循環血液量が増加します。その量は妊娠前の1.5倍です。ただ、血液の量が増えるというわけではなく、血漿といういわば血液中の水のような成分が増えるのです。産後には妊娠中に増えた循環血液量を元に戻そうとするため、不要となった水分が血管の外にでることで、体内の水分バランスがくずれ、産褥期にむくみとなって現れるのです。

また、産後にあまり動かずにいることで筋肉のポンプ機能が衰えてしまい、むくみがより生じやすくなることも原因の一つです。

便秘になりやすくなる

出産後のほとんどの女性が悩むのは便秘です。出産後は母乳が作られるようになりますが、母乳を作るにはお母さんの体の水分を必要とします。また、授乳や慣れない育児などに集中してしまい、水分摂取が不足したり、便意を感じた時にトイレへいくことができずにタイミングを逃してしまいがちです。

経膣分娩後の方は会陰の傷が怖くてふんばるのに躊躇してしまったり、帝王切開後の方は腹圧をかけることで傷に負荷がかかることを恐れてふんばれなかったり。

様々な原因で出産後は特に便秘になりやすい時期なのです。

産褥体操とは?効果と目的

03.jpg 産褥体操とは、産後すぐからはじめることのできる体操のことです。軽い運動からはじめ、体の回復に合わせて無理のないペースで運動の負荷を上げていきます。

産褥期の早いうちから産褥体操を行うことで、妊娠や出産によって伸びた筋肉やゆるんだ関節を元の妊娠前の状態へと戻すのを助ける効果があります。また、全身の血液循環を良くすることで、むくみの改善や子宮の回復を助ける効果もあります。

きついと感じるほど行う必要はなく、ご自身が気持ちいいと感じる程度の運動を毎日続けていくことでより効果を得ることができます。

出産による疲労を軽減し子宮の回復を助ける

出産後は経膣分娩、帝王切開ともに身体に大きな負荷がかかります。休息を取ることも大切ですが、動かないままでいると身体にとってよくないことも多々あります。むしろ、産褥期には動いた方が産後の回復はよくなるとすら言われているのです。

産褥期には悪露が出るようになりますが、生理と同様に重力がかかることで身体の外に排出しやすくなります。動かないままでいると悪露の排出が行われにくくなり、子宮の中に溜まった状態になってしまうのです。子宮内に悪露が溜まったままになると子宮が収縮しにくくなり子宮の戻りが悪くなります。また、溜まったままの悪露に感染が起きてしまうこともあるのです。

産褥体操をすることで全身の筋肉や関節を無理なく動かし、身体の疲労を軽減するだけでなく、子宮の回復も助ける効果が期待できます。

妊娠や出産によって緩んだ筋肉を戻す

妊娠や出産を終えた女性の身体は妊娠前の身体とは違います。ホルモンの影響もあり、色々な筋肉が緩んだ状態となるのです。それが原因で産褥期には尿漏れや腰痛を感じる方が多くいらっしゃいます。産褥体操では時期や部位にあった体操を取り入れることで、無理なく妊娠前の筋肉の状態へと戻すことを助ける効果があります。

血液循環を良くすることでむくみを解消する

むくみは筋肉のポンプ機能が促進されることで解消されやすくなります。産褥期には特に足のむくみを感じる方が多いです。そのため、特にふくらはぎを動かし、ポンプ機能を回復させることで足のむくみの解消につながります。

便秘の改善につながる

妊娠されていない方でも運動することで、便秘の改善につながるといわれています。出産後の女性にとってはさらに効果的であるといわれています。妊娠、出産を終えた産褥期にある女性はあらゆる関節や筋肉が緩みやすい状態にあります。そこで産褥体操をすることで、関節を元の位置にキープしたり、腹圧をかけるのに必要な筋力を鍛えることができます。そのため、便秘の改善にも効果的なのです。

母乳の分泌を促す

母乳は血液からできています。そのため全身の血液循環、特に肩甲骨付近の循環がよくなることで母乳の分泌が増えると言われています。もともと肩がコリやすい方は、肩周りの循環があまり良くない方が多いです。出産後は慣れない授乳の姿勢をとったり、赤ちゃんを抱っこしたりなどでより肩こりが起きやすい状態になります。肩周りをほぐす運動をすることで母乳の分泌をアップさせていきましょう。

ストレスを解消する

産褥期は出産後の疲れ、慣れない育児や睡眠不足によってストレスがとてもたまる時期です。自分の身体のことは二の次になりがちですが、ここで自分の身体に目を向けることも大切です。産褥体操をすることで自分の身体のどこがつらいのか、自分の身体の声を聞くことのできる良い機会にもなります。自分が心地よいと感じることのできる体操を無理なく取り入れることで、すっきりとした開放感を味わうこともできます。

産褥体操の注意点

04.jpg 産褥体操はただがむしゃらに運動すればいい!というわけではなく、産褥体操を行うには注意点がいくつかあります。

身体に負荷をかけすぎず、自分のペースで行う

産褥体操は無理をしてやるものではありません。経膣分娩後の方では、会陰縫合部がつっぱるような痛みがある場合には、痛みを感じない程度に行いましょう。帝王切開後の方では腹圧をかけることで傷に負担がかかるので、時期をみつつ行うようにしましょう。 ご自身の体調と相談しながら、心地よいと感じる程度で身体に負荷をかけ過ぎずに、ご自身のペースで行うことが大切です。

呼吸に合わせてゆったりと行う

産褥体操は筋力トレーニングとは目的が異なります。産褥体操の目的は無理なく妊娠、出産前の身体の状態へと回復させることを助けることにあります。そのため、自分の身体に負荷をかけて筋力を鍛えるものとは違い、心地よいと感じながら、呼吸に意識を向けて行うことが大切です。人は痛い時やつらい時には息を止めやすい傾向にあります。息がしずらいと感じる時は、身体に負荷がかかっているときです。ご自身の身体と呼吸に意識を向けてゆったりと産褥体操を行いましょう。

合併症がある方は医師や助産師に相談をしましょう

産褥体操は本来、身体の回復を助けるものですが、妊娠や出産に際して合併症がある方は、産褥体操の種類によっては悪化してしまうケースがあります。例えば妊娠高血圧症候群の診断を受けている方は、過剰に身体を動かすことで血圧上昇につながるリスクもあります。また、おすその傷が大きい方は傷に負担がかかってしまうリスクもあります。合併症があると言われている方はどんな産褥体操であれば大丈夫なのか、医師や助産師に相談してから行うようにしましょう。

まとめ

05.jpg 今回は産褥体操について紹介しました。妊娠、出産後の産褥期における女性の身体やホルモンの変化はとても大きく、様々なトラブルが生じやすい時期です。産褥体操は妊娠、出産を終えた女性の身体の回復を助けるだけでなく、身体のトラブルを予防したり、母乳の分泌を促したり、ストレスを解消したりと良い効果がたくさんあります。

ただ、無理をして行うと身体に負担がかかってしまい、返って逆効果になってしまうリスクもあるため、自分の呼吸と身体に意識を向けて心地よいと感じる程度で無理なく産褥体操を行っていくことが大切です。

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