妊娠前からの健康 ~女性編~

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妊娠前からの健康 ~女性編~

妊娠を計画している女性にとって、自身の体の健康について知ることはとても重要です。
妊娠前から健康を管理することが、健やかな妊娠や元気な赤ちゃんの誕生、そして家族の幸せにつながります。
妊娠前に行う健康管理を「プレコンセプションケア」といい、これは女性とそのパートナーが健康的な妊娠と出産を迎えるための大切なステップです。
ここでは、妊娠を希望する女性をはじめ、すべての女性が自身の健康を大切にするための、プレコンセプションケアについてお話ししていきます。

「プレコンセプションケア」とは

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プレコンセプションケアとは、妊娠を計画している女性やカップルが、妊娠前に行う健康管理や準備のことです。
妊娠前の段階で心身ともに健康を整えることで、妊娠中の合併症のリスクを減らし、健康な赤ちゃんを産むための基盤を作ることを目的としています。
日本でのプレコンセプションケアの認知度はまだ高くありませんが、母子健康手帳や妊活などを通じて少しずつ注目が高まり、自治体や医療機関でも妊娠前相談や健康教育の場が提供されています。
妊娠前からのヘルスケアであるプレコンセプションケアを取り入れることで、家族全体の健康を支え、より良い暮らしを期待することができるでしょう。

どんなことをすればいい?

では、プレコンセプションケアとは、どんなことに注意して生活すればよいのでしょうか。
主な内容を確認していきましょう。

健康診断と予防接種

プレコンセプションケアを始めるにあたり、まずは健康診断を受け、妊娠前の基本的な健康状態を確認しましょう。
基礎疾患や感染症の有無を確認し、妊娠に影響を与える疾患や生活習慣のリスクは治療していくようにしましょう。
風疹・水痘・B型肝炎などの予防接種の有無を確認し、必要に応じて接種しておくのもよいでしょう。

栄養と食生活の改善

妊娠前からの葉酸摂取が推奨されており、妊娠前から摂取することで、胎児の神経管欠損症のリスクを低減することにつながります。
また、鉄分やカルシウムなど必要な栄養素を十分に摂取し、栄養バランスのとれた食生活を心がけましょう。
妊娠への影響を考慮し、カフェインやアルコールの過剰摂取を避け、生活習慣の見直しもしていきましょう。

生活習慣の見直し

タバコやアルコールの摂取は、妊娠や胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があると言われています。
妊娠前から注意して生活していくとよいでしょう。
また、適度な運動と健康的な睡眠習慣を確保し、ストレスの軽減や身体づくりをしていきましょう。

妊娠に関する知識の習得

排卵や月経周期を把握することは、妊娠のタイミングを計る上で重要となります。
また、妊娠初期の注意点を事前に知ることで、必要な栄養素の摂取や生活習慣の改善、感染症予防など、母体と赤ちゃんの健康を守る準備ができます。

パートナーとのコミュニケーション

パートナーがいる方は、妊娠や育児に対する価値観や計画を共有することにより、妊娠への不安やストレスを軽減することができます。
パートナーとのコミュニケーションを深め、心理的なサポート体制を整えましょう。

プレコンセプションケア「チェック15項目」

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それでは、自分でできる「プレコンセプションケア」の細かい項目をひとつずつ確認し、チェックしていきましょう。

●適正体重(BMI)の維持

BMIは、体重と身長から算出される、肥満度を表す指標のひとつです。
健康管理や体重の適正範囲を判断するために自分で計算し、適正体重をキープしましょう。

計算式
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)²

〔判定基準(日本基準)〕
18.5未満:低体重(やせ)
18.5~24.9:普通体重
25.0以上:肥満

低体重では栄養不足や免疫力低下のリスクが高まる可能性があります。
妊娠を希望する女性が低体重の場合、妊娠の維持や胎児の成長に影響を及ぼすこともあります。
また、肥満は生活習慣病や妊娠中の合併症(妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病)などのリスクを高める可能性があります。
健康的な食事や運動で適正体重を目指しましょう。

●禁煙

妊娠前からの禁煙は、母体と赤ちゃんの健康を守るために非常に大切です。
タバコの煙に含まれる有害物質は、早産・流産・先天性異常のリスク・低出生体重児・突然死症候群などのリスクに繋がる可能性があります。
そのため、妊娠が分かってからではなく、妊娠を計画する段階で禁煙を開始することが理想的です。
受動喫煙も避けるため、家族やパートナーにも協力してもらいましょう。

●アルコール

妊娠前はホルモンバランスの乱れや排卵障害により、妊娠しにくくなることがあります。
また、妊娠のごく初期段階では妊娠に気づかない場合があるため、妊娠の可能性がある段階から控えるのが安全です。
アルコールを控え、体内環境を整えて、妊娠しやすい状態をつくっていきましょう。

●栄養バランスのよい食事

栄養管理は妊娠しやすい身体を作り、母体と赤ちゃんの健康を守るために重要です。
葉酸・鉄分・カルシウム・ビタミンD・オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)・亜鉛・たんぱく質などの栄養素は妊娠前に大切な栄養素です。
主食・主菜・副菜を基本とし、加工食品やファストフードを控え、カフェインや砂糖の多い飲み物を控えた食事を意識しましょう。
妊娠前から栄養をしっかり管理することで、健康的な妊娠と赤ちゃんの健やかな発育の土台を築くことができます。
必要な栄養素を食事で十分に摂れない場合は、医師や栄養士に相談し、葉酸や鉄分などのサプリメントを活用するのも良いでしょう。

●体を動かす

適切な運動を取り入れることで、体力を向上させるだけでなく、ストレスの軽減やホルモンバランスを整え、妊娠中から産後の身体にも良い影響を与えることが期待できます。
有酸素運動・ヨガやピラティス・ストレッチなど無理をせず習慣化していけたらいいですね。

●ストレスフリーと良い睡眠

妊娠を希望する段階で、心身のストレスを軽減することは、ホルモンバランスを整え、妊娠に適した身体を作るために大切です。
趣味や娯楽を大切にしたり、ヨガなどで身体を動かし心身をリラックスさせ、ストレスを溜め込まないように生活を今一度見直してみましょう。
また、十分な休息・睡眠を取ることで、心身の回復とリセットが促されます。
一定の睡眠時間の確保や就寝前のリラックスできる環境を意識しましょう。

●予防接種

妊娠を計画している女性は、産婦人科医や予防接種専門家と相談し、必要な予防接種を事前に受けることをお勧めします。
(風しんワクチン・三種混合ワクチン(麻しん/おたふく風邪/風しん)・B型肝炎ワクチン・水痘(みずぼうそう)ワクチン・インフルエンザワクチンなど)
また、HPVワクチンの接種が済んでいるかも確認しておきましょう。
HPVワクチンは、子宮頸がんを引き起こす可能性のあるヒトパピローマウイルス感染を予防するためのワクチンです。
定期接種の対象年齢は、小学校6年生から高校1年生相当となっており、感染予防の観点からも早めの接種が推奨されています。

●危険ドラッグや薬との付き合い方

胎児に悪影響を及ぼす可能性があり、先天的な障害や発育遅延・流産のリスクが高まります。
現在使用している薬の中で、妊娠に影響を与える可能性のあるものについて主治医と相談することも大切です。
危険な薬物や有害な薬品を避け、身体を健康に保つことが、健康な妊娠への第一歩となります。

●生活習慣病にならない

高血圧(高血圧症)や糖尿病・高脂血症などの生活習慣病は、妊娠や胎児の健康に大きな影響を与えるため、注意が必要です。
妊娠を計画している段階で生活習慣病がある場合は、妊娠前に適切な管理と予防をしましょう。

●がん検診

乳がんや子宮頸がん・子宮体がんなどの女性特有のがん検診も進んで受けましょう。
がんが早期に発見されることで、適切な治療が受けられ、妊娠をより安全に迎えることができます。

●かかりつけ医をもとう

健康状態の確認や管理、妊娠計画の相談ができる「かかりつけの婦人科」を持っていると安心です。
プレコンセプションケアをしていく中で病院との関わりは多くなるため、長い期間付き合っていける病院を見つけておきましょう。

●家族の病気について知ろう

妊娠前の健康管理のために、「遺伝性疾患」「妊娠に関連する病歴」などの有無を家族に聞いてみましょう。
家族の病歴を知ることで、遺伝や環境の影響によって妊娠や赤ちゃんにどんなリスクがあるのかを予測し、早めに対策を考えることができます。

●歯のケア

妊娠中は、ホルモンバランスや唾液量の変化により、歯周病や虫歯が発生しやすくなります。
歯周病は妊娠高血圧症候群・早産・低体重児のリスクを高めることが知られています。
妊娠前に歯の健康を整えてリスクを減らし、将来の母体と赤ちゃんの健康を守りましょう。

●将来のライフプランを考えよう

妊娠を計画する前に健康を整え、理想的なタイミングで赤ちゃんを迎えられるようにするために将来のライフプランを立てていきましょう。
自分自身や将来のパートナーの幸せを考え、お互いの就業状況や妊娠・出産に対する意向を確認し、話し合いましょう。
また、赤ちゃんを迎える時期についても考え、未来の生活を見据えたライフプランを描いておくことが大切です。

「ブライダルチェック」とは違うの?

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「ブライダルチェック」とは、結婚を控えたカップルが健康状態を確認するためのチェックです。
妊娠に向けての準備も含まれますが、主に結婚を前提とした身体の状態をチェックすることが目的です。
対して「プレコンセプションケア」は妊娠を計画する前の健康状態を整え、妊娠の準備を万全にすることが目的です。
どちらも、妊娠に向けての準備として重要なステップですが、プレコンセプションケアは健康のための生活の見直しから行うため、妊娠計画をより長期的に見据えたものとなります。

まとめ

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「プレコンセプションケア」には、自分自身でできる項目もあれば、病院や家族・パートナーと連携して取り組むべき項目もあります。
妊娠は心身に大きな変化をもたらすものですが、計画的に準備を進めることで、より良い結果を迎えることができます。
そのためには、周囲の支えと協力がとても重要です。
妊娠に向けた健康管理は、女性ひとりで行うものではなく、周りの人たちと共にサポートし合いながら進めていくことが望ましいです。
妊娠・出産につながる基本的なステップとなります。
妊娠を計画する前段階から少しずつプレコンセプションケアを始めていきましょう。

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