子宮頸管(しきゅうけいかん)とは? 短いとどうなる?

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子宮頸管(しきゅうけいかん)とは? 短いとどうなる?

妊娠中によく聞く「子宮頚管」ですが、子宮頸管とはいったいなんなのか知っていますか?

妊婦健診で子宮頸管の長さについてお話しをされたことがある方もいるのではないでしょうか。

今回は妊娠の経過に大きな影響を及ぼす子宮頸管の正体と子宮頸管の長さの違いについて、子宮頸管が短いことでどんなことが起きるのか、子宮頸管の長さが短いとどんな治療が必要になるのかについて解説していきます。

子宮頸管ってなに?

06.jpg 女性の生殖器は身体の外側に大陰唇・小陰唇・会陰があります。 身体の内側には外側から順に、膣、子宮頸管、子宮があります。

子宮頸管は膣と子宮をつなぐ筒状の道のことをいいます。

非妊娠時の子宮頸管は、精子を子宮に届きやすくする役割や細菌の侵入を妨げて子宮に感染がつくのを防ぐ役割があります。 非妊娠時にも大切な役割を担っている子宮頸管ですが、妊娠中の子宮頸管にもとても大切な役割があります。

赤ちゃんを子宮の中にとどめておく

妊娠中の子宮頸管は長さを保って硬く閉じていて、子宮の中にいる赤ちゃんが子宮の外に出るのを防いでいます。

赤ちゃんが生まれてもいい週数である正期産(妊娠37週以降)に近くなると子宮頸管は柔らかくなり、長さは少しずつ短くなって出産の準備をしていくのです。

感染を防ぐ

非妊娠時にも子宮頸管は外からの細菌が膣を通して入ってきた際に、子宮に到達しないように内部を酸性に保つことで細菌の侵入を防いでいます。

これは妊娠中も同様の役割を果たしています。子宮内は菌のない状態を保つことで、赤ちゃんを外からの感染から守っているのです。

出産のときに通り道となる

妊娠中は赤ちゃんが子宮の外に出ないように硬く閉じて守っていますが、出産のときには産道となって赤ちゃんの通り道となります。 正期産の時期になると子宮は前駆陣痛といって少し痛みの伴う子宮収縮が起き始めます。

このときお母さんはおなかの張りや生理痛ような痛みを感じます。 子宮が収縮することによって子宮頸管は引き伸ばされ柔らかく薄くなっていき、筒状になって閉じていたものが次第に開いていきます。出産でよく聞く「子宮口」というのは子宮頸管のことなのです。

子宮頸管の長さって?

05.jpg 子宮頸管の長さは妊婦健診でも聞いたことがあると思います。

なんとなく子宮頸管って長さを診ているんだなっていうのは知っていると思いますが、では子宮頸管の長さはどのように診ているのでしょうか。 また、子宮頸管の長さはいったいどのくらいが正常なのでしょうか。子宮頸管の長さによっては治療や入院が必要となるケースもあるのです。

子宮頸管の長さの測り方

子宮頸管の長さは経膣エコーといって、膣からエコーの機械を挿入して子宮頸管を診て測定しています。 子宮頸管は赤ちゃんを包む卵膜に近い側を内子宮口、膣側を外子宮口といいます。その内子宮口と外子宮口の長さを測っているのです。

膀胱に尿が溜まった状態だと膀胱が充満していることで子宮を圧迫をしてしまい、子宮頸管の長さを正しく測ることができません。

そのため検査の前には排尿をすませておきましょう。

検査中には妊婦さんに軽くふんばってもらうことで力が入った時に子宮頸管の長さが短くならないかも合わせてみています。

正常な子宮頸管の長さ

もともと子宮頸管の長さには個人差もありますが、一般的に正常な妊婦さんの子宮頸管の長さは妊娠週数によって変わってきます。 出産が近くなると自然と短くなるものだからです。妊娠30週未満では35〜40mm、妊娠32週から妊娠40週では25〜32mmと次第に短くなります。

異常な子宮頸管の長さ

妊娠24週未満で子宮頸管の長さが30mm以下であれば要注意です。 切迫早産になりかけているサインでもあります。 予防的な治療を指導されるケースも多いです。 また、妊娠24週未満で子宮頸管の長さが25mmより短いと、標準的な子宮頸管の長さの方に比べて早産となるリスクが6倍以上ともいわれています。 一般的に子宮頸管の長さが25mm以下になると入院管理が必要となります。

子宮頸管の長さが短いとどうなるの?

04.jpg 妊娠中は赤ちゃんを子宮の外に出さないようにするために、長さを保って硬く閉じているべき子宮頸管ですが、その長さが短くなるとどのような影響があるのでしょうか。

お母さんと赤ちゃんへの影響について解説します。

流産・早産のリスクが高まる

子宮頸管の長さが短くなると流産、早産のリスクが高まります。

流産とは、妊娠22週未満に赤ちゃんが子宮の外に出てしまう、つまり分娩となってしまうことをいいます。

妊娠22週未満の赤ちゃんは現在の医療では救命は不可能とされています。 早産とは、妊娠22週以降妊娠37週未満での分娩をいいます。 早産は生まれる時期によって赤ちゃんの予後は大きく変わってきます。 赤ちゃんの肺の成熟は妊娠34週でほぼ完成します。 正期産である妊娠37週に近ければ近いほど予後は良好です。 よく聞く「切迫早産」とはこの早産になるリスクが高い状態を指します。 適切な治療や入院管理で早産とならないように妊娠継続を目指します。

破水のリスクが高まる

子宮頸管は外からの感染から子宮の中にいる赤ちゃんを守っています。子宮頸管の長さが短くなることで膣と赤ちゃんを包む卵膜の交通がしやすくなってしまいます。

そうなることで卵膜に感染がつきやすくなります。卵膜に感染が生じると絨毛膜羊膜炎になり、破水のリスクも高まります。破水とは赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて羊水が外に流れ出ることをいいます。通常、破水は赤ちゃんが生まれる少し前に起きるものです。 羊水が外に流れ出ることで赤ちゃんを守る緩衝材としての機能が低下したり、赤ちゃんの呼吸運動の練習を妨げてしまいます。なにより、赤ちゃんが外の世界とつながってしまうので、赤ちゃんへの感染のリスクが高まります。

子宮頸管の長さはどうして短くなるの?

02.jpg 赤ちゃんがおなかの中にいる間はしっかりと長さを保っていて欲しい子宮頸管長ですが、様々な原因で短くなってしまうことがあります。 子宮頸管の長さが短くなる原因について紹介します。

原因①子宮の収縮

子宮頸管は子宮収縮が起こることで引き伸ばされて短くなります。

子宮の収縮は妊婦さんは「おなかの張り」として自覚します。おなかの張りはつっぱる程度のものから痛みを伴うものまで強弱があります。妊娠30週より前の正常な妊婦さんはおなかの張りを自覚することはほとんどありません。妊娠30週以降になると誰しも感じるようになりますが、痛みを伴うのは異常なサインです。痛みがなくても1時間に何回も張りがあるときは要注意です。

原因②子宮頸管無力症

子宮頸管無力症とは、陣痛やおなかの張りなどの症状がないにも関わらず子宮頸管の長さが短くなることをいいます。

原因は未だに解明されていませんが、もともとの体質や感染などが原因と考えられています。子宮頸管無力症は自覚症状がなく子宮頸管の長さが短くなっていくので妊婦健診で指摘され気がつきます。1回目に妊娠時に子宮頸管無力症と診断された人は、2回目の妊娠では予防的に子宮頸管縫縮術を行うケースが多いです。

原因③感染

なんらかの原因で感染が生じてしまうと子宮頸管の長さが短くなってしまうことがあります。

妊娠中には細菌感染が起こることでお母さんにとっても赤ちゃんにとっても様々なリスクが生まれます。

子宮頸管の長さが短いとどんな治療をするの?

07.jpg 子宮頸管の長さが短い場合、妊娠週数に応じた治療が行われます。入院管理が必要となるケースもあります。一般に子宮頸管の長さが25mm以下になると入院しての治療が推奨されていますが、その前後での子宮頸管の長さの変化や病院によって治療方針は異なります。

子宮頸管の長さが短い場合にどんな治療が行われるのでしょうか。

安静を保つ

子宮の収縮は妊婦さんが動くことで起きやすくなります。

そのため、安静にすることで子宮収縮を抑えて子宮頸管の長さを保つようにします。立ち仕事など体を動かすことが多い方や力仕事の方は仕事内容の調整や仕事を休むことをすすめられることもあります。また、入院して安静を保てるような環境を整え、経過観察するケースもあります。

内服薬・点滴により子宮の収縮を抑制する

安静を保ってもあまり効果がない場合には薬による治療を行います。

薬による治療はおおくは妊娠16週以降にリトドリンという薬を使用します。病院によっては妊娠16週より前に違う種類の薬を使うこともあります。リトドリンには内服薬と点滴があります。内服薬の場合は入院していない方でも飲むことができ、よくおなかがはる方に処方されます。点滴は24時間持続して投与する必要があるため、入院管理となります。リトドリンの副作用が強くて薬の使用が難しい場合には、硫酸マグネシウムを投与する病院もありますが、こちらも入院での管理となります。

点滴による治療が必要となった場合は入院が必要になるのです。

感染に対して薬の投与をする

なんらかの原因で感染が生じてしまった場合には、感染の種類に応じて抗菌薬を投与します。

感染している場合には入院での管理が必要になります。感染は放っておくとどんどん進行してしまうので、適切な処置が必要なのです。入院が必要となる理由としては、なにより急速に病状が悪化するリスクがあるためです。必要に応じて採血などの検査を行い、適切に治療が進んでいるか評価しながら注意深く入院して経過観察が必要なのです。

子宮頸管縫縮術を行う

子宮頸管無力症の方に対しては子宮頸管縫縮術を行うケースもあります。子宮頸管縫縮術とは名前の通り、入院して手術によって子宮頸管を縛って子宮口が開くのを防ぎます。 子宮頸管縫縮術は手術ができる週数も限られています。

1回目の妊娠で子宮頸管無力症と診断を受けた方は2回目以降の妊娠で手術をすすめられることが多いです。そうした方は予防的に手術を行うため、入院期間は短期間のケースが多いです。進行中の子宮頸管無力症の場合には入院は長期化するケースが多いです。 

まとめ

01.jpg 今回は妊娠の経過に大きな影響を及ぼす子宮頸管の正体と子宮頸管の長さの違いについて、子宮頸管が短いことでどんなことが起きるのか、子宮頸管の長さが短いとどんな治療が必要になるのかについて解説しました。

子宮頸管は短くなることで早産のリスクが高まるため適切な管理が必要となります。場合によっては長期的に入院が必要となることもありますが、お母さんと赤ちゃんにとって必要な治療ですのでしっかりと知識を持った上で管理していきましょう。

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